 |
 |
珠数は、合掌の際に手にかけて、仏さまと心を通わせるために不可欠な仏具。身だしなみとして、大人ならひとつは自分の珠数を持っておきたいものです。また、それと同時に、もっと身近に、もっと多くの人に親しんでもらえないか。10代目・恵介氏はそう考えています。
京都の中野伊助商店に入ると“かなうわ”“やせるわ”といった、ユニークなネーミングのブレスレットが飾られています。「珠数というと葬儀に使うことを連想される方が多いのですが、こういう商品があると、みなさん笑いながら気軽に珠数を買っていかれるんですね。その姿を見て、若い方に珠数のよさを知っていただくには、まずは身近なお守りから。入口を広げることが大切だと感じたのです」。
|
|
 |
ここ数年、確かに宝石や石などによるブレスレットがブームです。有名人やスポーツ選手までが、珠数によるブレスレットやネックレスを身に付けています。
「最近ではよく、若い女性の方が、恋が叶うようにとローズクォーツのハート型ブレスレットを購入されていかれます。宝石には、それぞれに意味がありますが、仏具としてではなく、願を掛けるアクセサリーとしてお持ちになるわけです。私は、そういった使い方を、もっとどんどんしていただきたい。思いを込めて作った京念珠を、ファッションとしておしゃれに、そしてセンスよくつけてくださるのは、とてもうれしいことなのです」。
不安の多い世の中だからこそ、さりげなく自らの願をアクセサリーに託す。そんなニーズに応える恵介氏は、水晶のパワーを取り入れた念珠ブレス、ゲルマニウムとパワーストーンを組み合わせた作品など、斬新なアイデアによる念珠も多く提案しています。
|
|
 |
2006年3月、中野伊助商店は、国連60周年記念行事に参加。NY国連本部に招かれ、世界ではじめて京念珠の実演を行いました。
恵介氏いわく、「世界191ヶ国の人々に、珠数の実演を通じて、何か訴えかけることはできないか。そう模索し、世界平和記念珠数『ピース・スフィア(peace Sphere)平和の球体・平和の天空』を制作しました。平和を祈り、世界30ヶ国の言語で、世界平和を祈念する言葉を、珠のひとつひとつに刻印したのです。また、房の色は世界平和を表す青色とし、さらに、すべての珠を糸でつなぎ、それが円、輪となることで平和を象徴する念珠を完成させました」。
日本の伝統工芸の粋を越えるこのデモンストレーションは、国連内191ヶ国の人々に大反響を呼び、世界中のマスコミたちの間で話題になりました。
その後、ピース・スフィアの理念は、さらに広まり、今年8月に京都国際会議場にて開かれた「世界宗教者平和会議」に参加した仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教などの指導者らに配付し、参加者らに深い感銘を与えました。
「世の中の人すべてが幸せになって欲しい。そのために、珠数がほんの少しでも役に立てれば私自身もうれしい。そんな気持ちでひと珠ずつを紐に通しているのです」。 |
|
 |
10代目 中野伊助
昭和37年京都生まれ
大阪経済大学在学中から実家の手伝いをはじめ、母の病気を機に本格的な念珠作りをはじめる。ひとと人とのつながり、世界の平和を念珠作りに込め、伝統を守りながらも、お守りやブレスレットなど、アクセサリーとしての珠数も作成し、京念珠の可能性を模索する。 |
|
 |
|
 |
|
|